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VLOG 動画制作のヒント:「Log 撮影」 と「 LUT」

iTWS japanJin Shibata です。

前回まで「Vlog 動画事始め」として3回にわたり、2020年夏から始めた動画制作から学んだことを機材選び・撮影設定・テーマの選定などの観点から包括的にアップしました。今回は、動画撮影・編集で最近私のスタンダードとなっている Log 撮影とカラーグレーディングに必要な LUT について少し深堀りしてみようと思います。動画制作のヒントになれば幸いです。

Log 撮影と LUT
動画撮影を始めてから数か月は、カメラに搭載されているプリセットの中から「ニュートラル」「スタンダード」「風景」などを選択し映像の質感を模索していました。どれもが順光であればとても綺麗な画像がとれますが、逆光の素材を撮影する時に暗部の黒つぶれとハイライト部の白飛びをバランスよく調整することができません。桜の撮影で逆光のシーンがほぼ全て使い物にならないことがあり、何とか改善しなくてはと思って試したのが Log 撮影です。

Log 撮影とは映像データを対数符号化(色の数値化)したものです。対数の英語の略は Log ですね。Log 撮影では、限られたデータ領域を人間の眼の特性に合わせて暗部には多くの階調を、ハイライト部に少ない階調を割り振ります。そのことにより広いダイナミックレンジ(暗部からハイライト部まで描写できる幅)が得られ、黒つぶれや白飛びを起こしがちな被写体でも色のデータが失われることなく記録されます。Log 撮影は新しい映像規格である HDR 仕様の映像機器で出力するのに適していると言われます(HDR はハイ・ダイナミック・レンジの略)。ちなみに現在の多くの TV や PC のモニターは SDR 規格です( SDR はスタンダード・ダイナミック・レンジの略)。

Log 撮影は編集段階で「色付け」(カラーグレーディング)をすることを前提にした撮影手段です。実際に Log 撮影されたデータのままだと白あせたような「眠い映像」になります。そうした Log 撮影データを人間の眼に自然に見える画像に変換する作業(カラーグレーディング)が必要になりますが、そこで登場するのが LUT です。LUT は Look Up Table の略で「ラット」と読みます。これは Log 撮影で得られた数値化された映像情報を、画像出力する映像機器(スマホ、タブレット、PCのモニター画面など)に合わせて変換・補正を行う対照表です。Log で撮影したデータに編集段階で LUT を適用して、白飛びや黒つぶれを抑えつつ撮影時の元の色調を復元します。

S-Log とHLG
私はソニーのカメラを使っています。ソニーの Log 撮影規格は S-Log と呼ばれ、それに合わせたカラーグレーディング用の LUT をソニーが提供しています(キヤノンなら C-Log)。カラーグレーディングには好みがありますので、ソニー純正の LUT 以外にも無料・有料の LUT から自分の好みに合った LUT の適用ができます。

HLG (ハイブリッド・ログ・ガンマ) は、Log (HDR に最適) と Rec709 (フル HD/SDR 用の動画標準色域)のハイブリッドで HDR と SDR 両方の映像出力機器に対応できます。白飛び・黒つぶれが抑えられノイズ発生が少ないのが長所ですが、Log 撮影よりダイナミック・レンジは狭くなります。私の所有するソニーのカメラでは数種類の S-Log と HLG が選択できます。

当初は S-Log で撮影してソニー製 LUT を当てていましたが、撮影時のモニターに映し出される Log 撮影特有の「眠い画面」と目の前に広がっている現実の色調とのギャップが大きすぎて馴染めず苦労しました。しかし S-Log の代わりに HLG を試したところ、撮影時のモニター画面の「眠さ」がぐっと少ないうえに編集時のカラーコレクション・カラーグレーディングもずっと容易なことが判りましたので、現在は HLG を使っています。

動画編集ソフトとしての LumaFusion と Leeming LUT
動画編集ソフトはいくつかの無料版を試用した後、Adobe Premiere Rush モバイル有料版(月額550円、年額3800円)を数か月使用しました。使いやすい編集ソフトですが、Log 撮影データに LUT を適用する機能がありません(プロジェクトの保存も不安定で不満でした)。上位ソフトである Adobe Premiere Pro なら LUT が使えますが、画像処理能力の高い PC に買い替えなくてはなりません(32GB、Core i7、GeForce GTX1660 搭載の20万円はする PC で要求スペックのギリギリ)。そこで手持ちの iPad Pro で動作し LUT が使える LumaFusion を導入しました。iOS 用に開発されたもので4K素材も問題なく使えます。また3680円で買い切り、その後のアップグレードも無料です。LumaFusion には様々な LUT のプリセットが搭載されていますが、外部から新たな LUT を導入することもできます。また自分でカラーコレクション・カラーグレーディングも RGB 毎の色調整以外はほぼできます。動画の編集機能は Adobe Premiere Rush より格段に高機能ですので、最初から LumaFusion を導入すべきでした。

LumaFusion の編集画面: HLG 撮影データの「眠い」映像(カラーグレーディング前)


LumaFusion の編集画面:HLG 撮影データに 「Leeming LUT」 を当てて、補正プリセット「オリジナル」で明るさとコントラストを微調整

S-Log では苦労しましたが HLG で撮影するようになってから LumaFusion でのカラーコレクション・カラーグレーディングは容易になりました。しかし、自分で調整した映像を数日後に改めて見ると色の補正し過ぎと思えることが何度かあり、何が正しい色なのか疑問に思うようになりました。YouTube などで色使いが自然な人や、私好みの色で動画を載せているいる映像クリエーターが、Paul Leeming 氏が作成した LUT を使っていることがわかりました。Leeming LUT と呼ばれソニーのカメラに搭載されている全種類の Log 撮影に当てられる LUT のセットを購入してみました。Leeming LUT を使用するにあたりゼブラ表示などカメラの設定に関して推奨値が示されますが、所有する2台のカメラ(α7R3、RX100M6) でその推奨値を試してカメラに合わせて微調整をしました。30 Euro と高額でしたが、結果はとても満足しています。出力される色の自然さが素敵です。

Leeming LUT 導入後は LumaFusion でのカラーコレクション・カラーグレーディングはとてもシンプルになりました。LumaFusion の「色とエフェクトツール」の補正プリセットからまず「オリジナル」を、次に Leeming LUT をあてます(この順番は大事)。「オリジナル」は明るさ、コントラスト、彩度、ハイライト、影、色合いなどの調整ができるツールですが、Leeming LUT によるカラーグレーディングを基本にして「オリジナル」での調整は明るさとコントラストくらいまでの最小限に抑えます。LumaFusion を購入した直後に、RGB 毎の色調整をするために VideoLUT を購入しました(610円 買い切り)。VideoLUT は自分でカラーコレクション・カラーグレーディングをして LUT を作成できるので、LumaFusion で色調整が上手くいかない時に使っていました。しかし、最近は出番がありません。Leeming LUT によるカラーグレーディングが私には一番自然に見えるからです。

こうして動画編集の話をしてみると、私が多くの試行錯誤を繰り返して随分と無駄遣いをしているのがわかります。知らなかった世界ですから仕方ないですけど、動画を始めようと考えている方にとって参考になれば幸いです。ここまで読んでくださってありがとうございます。

By Jin Shibata

jin.shibata@i3ws.co.jp

 

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