
“通訳ガイド事業で起業する”場合、
一人で行うべきか、または趣旨に賛同する仲間を募るべきか
について、前回、私は後者を選択し、その根拠を提示させていただきました。それでは、グループで起業するとして、どのような形態が望ましいのか―について、これから何回かに分けて説明させていただきます。
さて、経営資源には昨今、情報、時間、知的財産も含まれると言われますが、一般的には「人、モノ、カネ」を指します。経営資源が無限にあれば気にする必要もないのですが、通常は限られた中で上手くやり繰りしていくことが求められます。起業後1年半も満たないわれわれも、その例外ではありません。
この「人、モノ、カネ」の3つの経営資源の中でも、特に「人」が重要です。赤の他人が組織化して事業を運営していくためには、組織におけるお互いの役割を明確にする必要があります。私が任意団体でなく法定組織を選択した理由もここにあります。
任意団体…同じ目的をもつ人々でつくられるが、法の保護を受けられない私的団体
法定組織…法律に基づいて設置される組織(例:株式会社、合同会社、NPO法人、一般社団法人、宗教法人)
前者の代表例は、大学のサークルになります。私は現在、一般社団法人東京都中小企業診断士協会が認定するコンテンツビジネス研究会に所属しておりますが、この研究会も任意団体です。さらに、都道府県単位の通訳案内士仲間で作ったと思われる組織も、そのほとんどが任意団体であるに違いありません。
これら全てに共通しているのは、組織運営がボランティア精神によってなされがちであることです。そして、大概のケースにおいて、組織というのは、貢献度の高い人間と低い人間に分かれます。前者に何がしかの見返り(報酬や地位等)があればまだ救いはあるのですが、それがない場合、貢献度の低い人間への不満が蓄積されたり、心が折れたりします。
Webサイトを拝見させていただいた、通訳案内士仲間で作ったと思われるいくつかの任意団体の運営実態がどうなのか―個人的にはとても関心があります。通訳案内士のITリテラシーは一般的に低く、Webサイトの制作を外注しなかったとすると、ITリテラシーの相対的に高い通訳案内士に間違いなく負荷がかかっています。その方が御仏のような心をもっていれば別ですが、やる気を失った時点でWebサイトはまともに更新されず、任意団体は機能しなくなります。
私は現在、“有限責任事業組合”という法定組織のメンバーです。経営戦略全般と経理を担当し、さらにWebサイトの運営責任者でもあります。間違いなく、他のメンバーよりも負担が重くなっていますが、サラリーマンではないので、それらの業務によって給与をもらってはいません。
正直なところ、それについてアンフェアだと思うことがないとは言えませんが、“適材適所”として自分を納得させています。それが可能なのも、他のメンバーも組織内で何がしかの役割を担わなければならない、という法の定めがあるからです。仮にボランティア精神で運営していたとしたら、とっくに組織は崩壊していたはずです。
そういう意味で、通訳案内士として「起業」し、真面目に組織運営していくのであれば、任意団体でなく法定組織を選択すべきです。その一方で、“単なる情報交換の場”として組織を位置付けるのであれば、任意団体で十分でしょう。
有限責任事業組合 iTWS japan
Webサイト運営責任者 高野 雄希
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