ブログ

お寺で茶道(ガイド体験記)

都内のお寺で行われている「茶道の体験」にイギリス人の若いカップルを案内しました。私は成田市観光館でときどき開催される略式の茶道体験会に数回参加したことがある程度で「本格的な茶道」の知識はほとんどありません。しかしせっかくのチャンス、茶道について通訳の事前準備をして、なんとか対応しました。その概要を紹介します。

■ 白い靴下
お寺の玄関で呼び鈴をならすと、袈裟を着た40代の聡明そうな住職が丁寧に出迎えてくれ、三十畳はあろうかという広い本堂の裏手にある四畳半ほどの和室に案内してくれました。ここは控え室で、荷物を置いたり、着替えをしたりしてよいとのことなので、用意していた白いソックスに履き替えました。この寺のホームページに「茶道をするときは白い靴下を用意してください」と書いてあります。茶道の際は白い足袋を履くことがマナーだからだそうです。

■ 躙り口(にじりぐち)
控室のとなりに四畳半の茶室がありました。躙り口という1メートル四方もないような小さな出入り口と、普通のふすまの出入り口があり、住職の案内で二人は躙り口から、かがんで入りました。座布団に座ってしばらくすると住職が説明を始めました。

茶道では「茶室は俗世間から隔離された空間であり、みな平等にお茶を楽しむ場である」という考え方があります。躙り口は小さいので武士は刀を中に入れることはできません。これによって平等な空間を作り出しているのです。茶道が始まった15世紀の日本は封建時代で貴族、武士、僧侶など上流階級の人のみが茶道をしていました。16世紀になって商人が貿易で富を蓄えるようになると商人も茶道を楽しむようになり、躙り口が取り入れられたのです。

■ 床の間の掛け軸
床の間には掛け軸と百合の生け花が飾られており、季節に応じて架け替える「掛け軸」の説明をしてくれました。掛け軸には、上から下に二行の詩が流麗な字体で書かれています。内容は、滝の水が流れ落ちて辺りに水しぶきが散っている様を描写しているそうです。夏だからこの詩を選んだと付け加えました。茶室に来た客は、この詩を読んで、しばし夏の暑さを忘れるという効果があるとのこと。

これを聞いた二人は、「字は読めないが、滝のしぶきを思い描いたら新鮮な気持ちになった」と言っていました。

■ 和菓子
最初に小ぶりの皿に載せた和菓子を出してくれました。夏にふさわしいピンク色のもち米でできたもっちりした和菓子です。虎屋という有名な和菓子屋で買ったそうです。虎屋は創業400年で最初は京都で公家に贔屓にされて繁栄し、明治初期に天皇が京都から東京に移られると、後を追って東京に移転したというエピソードを持つ老舗です。現在、日本で二番目の売上があり、ニューヨークとパリに支店をもっていることも話してくれました。

住職のやり方を真似て、二人は和菓子を竹串で二つに切り、口に入れました。ちょっと甘すぎたようです。

■ お茶
住職は目の前でお茶を作法に沿って、たてました。その間、静かな時間が流れました。
抹茶茶碗は大きめの織部焼の器で、客の前にそっと置き、丁寧にお辞儀をしました。二人も反射的にぎこちないお辞儀を返しました。

住職は茶碗を左の手のひらに載せ、右手で茶碗を時計回りに2度少し回し、お茶を飲み、最後に残ったお茶を「ズッ」と音を立てて飲み干しました。「これは正式な作法です。でも今日はゆっくりお茶を味わって飲んでください。」と言ったので、二人はほっとした様子で、ゆっくりとお茶をのみました。

■ 茶の歴史
飲み終えたところで、住職はお茶の歴史を話し始めました。お茶は中国の南部が発祥の地とされています。最初は薬として飲まれていたようですが、特に僧が、お経をとなえる際の眠気覚ましとして飲んでいました。

12世紀に栄西という禅僧が中国に禅を学びに留学し帰国した際、茶を日常的に飲む習慣を日本に紹介しました。この頃から日本で茶の栽培が本格化したようです。お茶は、僧、公家、武士など上流階級の人々のみの道楽でした。

15から16世紀には裕福な商人がお茶を飲む作法を編み出しました。そして千利休という人が茶道の体系を作り上げ、その考え方や作法が今日まで継承されています。

■ Q&A
次のようなやり取りがありました。

Q1:天井にあるフックは何に利用するのか。
A1:茶室には囲炉裏(いろり)をしつらえてあり、冬には炭火でそこに火をおこし、天井のフックから長い棒を下げその先に湯釜を下げて湯を沸かします。そのためのフック。

Q2:何故、白いソックスを履くのか。
A2:江戸時代には外出の際、男は黒か紺の足袋、女は白の足袋を履き、家の中では男も女も白足袋を履いていました。その習慣が茶道にのこっているのです。

Q3:僧はどのように修行するのか。
A3:このお寺は臨済宗であり、京都にある臨済宗の総本山の傘下の寺なので、その寺で5年間座禅などの修行をした。最近は仏教系の大学で学んだ後、大きな寺で3年から10年修行し、その後、故郷の寺に入る僧が多い。

■■■ 最後に

茶道の通訳は初めてでしたが、以下の「わび、さび」についてなども含めて事前準備した効果があり、なんとか通訳できました。外国人も静かなお寺での茶道体験を満喫したようです。次の機会が楽しみです。

「茶道の精神、わびさび」の説明
茶道の精神は「わび・さび」で表現されています。

さびは、見た目の美しさについての言葉です。この世のものは、経年変化によって、さびれたり、汚れたり、欠けたりします。一般的には劣化とみなされますが、逆に、その変化が織りなす、多様で独特な美しさをさびといいます。

一方、わびは、さびれや汚れを受け入れ、楽しもうとするポジティブな心についての言葉です。つまり、さびの美しさを見出す心が「わび」なんです。

(出典:「わび・さびの意味を説明できますか?」 クーリエジャポンのHP, 2014.4.30)

by Eddy

関連記事

  1. 全ての訪日外国人が日本に興味があるわけではありません
  2. 車いすのお客様をタクシーに乗せる際の注意点
  3. お花見@目黒川
  4. 初めてのガイド
  5. 都内でお花見(ガイド体験記)
  6. 成田から東京観光(ガイド体験記)
  7. ベジタリアンのお客様をガイドした時の教訓
  8. 食事の注意(ガイドのノウハウ)
PAGE TOP