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有限責任と無限責任

シリーズものブログの更新が2週間ほど止まっていた間に、1929年の世界大恐慌以来と思われるボラティリティの高い米国株式市場を眺めつつ、デリバティブトレーダーだったアラサーの頃をしみじみと思い起こしているWebサイト運営責任者の高野 雄希です(アイキャッチ画像には、GHQの跡地に立つ、当時勤務していた金融機関が写っています)。

さて、前回は「法人」または「法人格」について触れました。今回から複数回に分けて、

  1. 一般的によく知られている組織の1つである株式会社
  2. それほど認知度は高くはないものの、外資系の大企業を中心に活用されている合同会社
  3. 世間的な認知はほとんどないが、われわれが選択した組織である有限責任事業組合

にかかるメリットやデメリットを中心に、3つの組織の相違点を説明させていただきます。われわれがなぜ、認知度の極めて低い法定組織で起業したのかをご理解いただくのが、このシリーズものブログの大きな目的の1つであります。ただし、私は法律の専門家ではなく、法律の知識を授けることを目的にはしておりません。各組織の定義や詳細については、読者各位にお調べいただくことになるかもしれませんことを、あらかじめお伝えいたします。

早速ですが、3つの組織のメリットとデメリットを箇条書きした表を、以下に示します。
注)スマホでご覧になっている場合、お手数をおかけしますが、横向きにしていただくときれいに表示されます。

 メリットデメリット
株式会社
(Corporation)
・社会的に高い信用力
・法人格がある
・出資者の責任は有限
・所有と経営が分離
・硬直的な内部自治
・硬直的な損益分配
・設立までの手間と費用がかかる
・二重課税
・赤字でも、法人住民税の支払いが必要
・決算公告が必要
合同会社
(LLC: Limited Liability Company)
・法人格がある
・出資者の責任は有限
・柔軟な内部自治
・設立費用が安い
・重要な意思決定の全員一致(原則)
・二重課税
・赤字でも、法人住民税の支払いが必要
有限責任事業組合
(LLP: Limited Liability Partnership)
・出資者の責任は有限
・柔軟な内部自治
・パススルー課税
・設立までの手間と費用がかからない
・社会的な認知度が極めて低い
・法人格がない
・重要な意思決定の全員一致(原則)
・全組合員が何らかの業務を執行
・存続期間は有期
・組合員の頻繁な新規加入・脱退には不向き

まず、3つの組織に共通するメリットとして有限責任制が挙げられます。出資者(株式会社であれば「株主」)が出資額の範囲までしか事業上の責任を負わない―という制度のことです。

例えば、株式会社が1億円の負債を残して倒産した場合、出資額が1000万円であれば、株主の責任は1000万円の範囲にとどまります。これに対して、私は以前、起業は一人かグループかにおいて、個人事業主は無限責任を負うことにつき言及しました。個人事業主の場合、出資額1000万円の範囲内を超え、1億円の負債についても相応の責任が発生します。下手をすると、個人の財産を処分してでも債務を弁済する必要が出てきます。

次に、株式会社や合同会社(LLC)等の会社組織にあって、有限責任事業組合(LLP)にない決定的なものとして、前回の記事で説明させていただいた「法人格」があります。法人格があることは、メリットにもデメリットにも働きます

メリットとしては、社会的な信用度に直結し、また、許認可が必要な事業を行うことが可能であることが挙げられます。個人事業主も事業許認可の取得主体になり得ますが、LLPは不可能です。例えば、通訳案内士と密接にかかわる旅行業や旅行代理店業については、許認可の中でも「登録」に分類されています。登録を行うことで開業することができるのですが、LLP名義ではそれがかなわず、旅行業務取扱管理者(国家資格)を取得している組合員の個人名義で登録することになります。

法人格のあることのデメリットとしては、法人住民税の支払義務とともに二重課税(法人税を課された上に社員への配当金へも課税される)問題が挙げられます。これに対し、法人格のないLLPにおいては、法人住民税の支払義務は当然のこと、パススルー課税(構成員課税)が適用されるため、二重課税の問題も発生しません。事業上の損失が発生した場合でも、株式会社やLLCではその損失を出資者が取り込むことはできませんが、LLPでは出資者の他の事業所得と通算ができ、税負担を軽減することが可能です。

キリが良いので、今回はここまでにさせていただきます。

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