
ようやくシリーズものの本編に突入という感じですが、直営業のすゝめ(中)において言及した“通訳案内士がガイド契約を締結するケース”をおさらいします。
① 国内の旅行会社との間で業務委託契約を結ぶ
② 外国人旅行者と旅行契約を締結した国外の旅行会社との間で業務委託契約を結ぶ
③ 派遣会社との間で労働契約を結び、ガイドを行う
④ マッチングサイトを通じて、外国人旅行者と直接ガイド契約を結ぶ
の4つになります。これらに加え、
⑤ 外国人旅行者への「直営業」を行う。すなわち、通訳案内士が自らインターネットを通じた集客を行い、外国人旅行者と直接ガイド契約を結ぶ
という「起業家」としてのビジネスモデルは、同じくプラットフォームを利用するケース④とは別の意味で時流に乗ったものです。ただし、目新しいビジネスモデルという訳ではありません。
当組合が始めるよりもだいぶ以前から、このような取組みをされてきた通訳案内士は存在します。個人であったり、都道府県単位の通訳案内士仲間で作ったと思われる任意団体だったり、いくつかのWebサイトを拝見させていただきました。
“通訳ガイド事業で起業する”アイディアを相談者に提案する際に、最初に検討したことは、
一人で行うか、または趣旨に賛同する仲間を募るか
でした。前者はフィージビリティが限りなく低いので、瞬時に却下しました。相談者のITリテラシーを一切考慮しなかったとして、
等組織上の問題点を容易に指摘できます。
特に1.は致命的だと考えています。逆の立場を想像してみれば分かるはずです。あなたがイタリア旅行を計画したとして、Webサイトを運営している一人のイタリア人が英語でガイドを行うと言っています。あなたは先にガイド料金を支払ってガイド契約を結びますか?私なら怖くてそんなリスクは取れません。『当日、この自称イタリア人ガイドは本当に待ち合わせ場所に来るのか?』と不安でたまらなくなります。
実は2.も小さくないリスクを孕んでいます。通訳案内士を対象にした保険に加入することで、リスクをある程度軽減することは可能ですが、個人事業主は法律上、無限責任を負うことになっています。また、株式会社や合同会社のような一人会社を設立すれば、責任の範囲は限定的になりますが、会社設立費用や法人住民税の支払いが不可避です(ここらへんは、別途説明する予定)。先例があまりなく、事業が成功するイメージが掴みづらい中で、なかなか積極的に取れない選択肢です。
これらと比較すると、3.はそれほど大きな問題には見えません。ただし、ブログを書かれた経験のある方には同意いただけると思いますが、ある程度の量と質を備えた記事を定期的に書くには、相当の意志の強さが要求されます。それを外国語でし続けなければならないのです。ブログの更新がしばらく止まってしまうと、『この通訳ガイドは全然活動していないのではないか?』というネガティブな印象を与えかねません。
そして、このWebサイトのようにWordPressを使おうとすると、ある程度のITリテラシーも要求されます。その上、トラブルに備え、法律的な知識も有しておくに越したことはありません。「一人で起業する」ことを提案するのは、あまりに無責任だと判断しました。従って、
どのように「組織化」するのが、通訳ガイドにとってコスパの良い「起業」になるのか
について頭を悩ますことになります。なお、通訳案内士が一人でWebサイトを運営する効果は全くない-と主張している訳ではありません。冒頭の①や②のケースのように、国内外の旅行会社に対して自分を売り込むためのツールとしては十分に有効であると考えています。
今週は頑張って記事を書いてきましたが、最終回までペースを落とさず続けていけたらと思います。次回をお楽しみに。
有限責任事業組合 iTWS japan
Webサイト運営責任者 高野 雄希
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。