動画制作の実際(鎌倉報国寺を素材にして)

今回は iTWS japan のインスタグラムにアップした「鎌倉報国寺」の1分動画を例にとり、実際にどのようにプロジェクトを制作しているかを振り返ってみます。動画は作り手の個性と嗜好が現れたものですので動画をどう作るかに正解はないと思いますが、皆さんの動画作成の参考になれば幸いです。

インスタグラムに投稿した動画
「鎌倉報国寺」のプロジェクトは4Kで撮影・編集しました。しかし、インスタグラムの場合は重いファイルはスマホでうまく再生できないので、解像度を2Kに落として約171MBのファイルを投稿しました。

動画のテーマ
今回の動画のテーマは「竹と光」、ストーリーは「光に溢れる竹林を歩き石仏や灯籠との情景をシンプルに紹介する」としました。この情景は私自身が報国寺の一番の魅力だと思っているポイントです。

動画に採用したクリップはいくつ?
プロジェクトに採用したクリップは19です。鐘楼や枯山水の庭なども撮影しましたが、プロジェクト編集中に「没」となりました。インスタグラム動画の尺の制約の中、ストーリーに絶対必要なシーンではないとの判断です。

クリップの選択とシーケンス
実際に採用した19クリップを以下に並べて
、簡単に作り手としての意図を記してみます。

1)最初のクリップはサムネイル的な役割を持ちますが、竹の庭の中央から上を見上げたシーンにより竹を主題にしていることを示します。

2)前クリップの「竹」とこのクリップの「山門」に「Hokokuji Temple」のタイトルを重ねて「竹の寺」の紹介を始めます。

3)山門をくぐって報国寺の境内へ。カメラは前進して入山を象徴します。

4)カメラはさらに前進して参道横の光さす苔の庭へ。

5)苔の庭から本堂へつなぐ固定ショット。前クリップの前後の動きをこのクリップで左右に移動するカップルに引き継ぎます。

6)固定ショットの緑の前庭(竹が奥に見える)を挟み、次の竹の庭へつなぎます。

7)竹の庭で差し込む光と竹の庭の中に進む人を捉えます。

8)前クリップの進む人と同じ方向で、竹の庭と灯籠を捉えて連続を示唆します。

9)前クリップの寄りのショットで竹と灯籠の情景を強調します。

10)前クリップの灯籠と石塔を当クリップの五重石塔と7体の石仏像でマッチ・カットを意識して繋ぎます。

11)石仏像の寄りのショット。

12)五重石塔を別アングルで捉えます。

13)五重石塔の寄りのショット。光が揺らいでいるシーンです。

14)再び竹の庭のシーンへ。前クリップの五重石塔に導かれた視線を当クリップの灯籠が受け止めてつなぎます。

15)光に溢れた竹の庭。斜光で画面に変化を与えます。

16)前クリップの斜光と同じ方向性の光をもった当クリップで繋ぎます。

17)前クリップの石仏像を寄りのショットで強調します。

18)引きのショットで竹林を大きく描写。前後の動きで奥行を現します。

19)前クリップの縦に伸びる竹を、当クリップで上に延ばして空までもっていき動画の終わりへ。

以上、何故これらの19のクリップが選ばれて、このようなシーケンスになったかを記してみました。これらはこのブログを書いて改めて文字にしましたが、実際の編集作業時は「クリップとクリップをどう繋げると自然な流れになるか」を意識しているだけです。もっと「自然な流れ」にしたいのですが、それにふさわしいクリップが撮影できておらず、動画編集では妥協せざるを得ないことが大半です。動画は本当に難しいです。

柴田 仁

一期一会 今日の出会いを大切に

全国通訳案内士(英語)の資格に加えて「あきた白神ガイド」(秋田県認定)や「登山ガイド」(日本山岳ガイド協会認定)などの資格も持っていますので、観光地のみならず日本の自然をご紹介できるガイドを目指しています。

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