ニュージーランド・クルーズ体験記(2)

船上でケガし医療スタッフのお世話になった顛末

私はこの航海中に船室で足の指をケガしてしまい、医療スタッフに治療してもらいました。この貴重な経験から「外国船クルーズ旅行」の教訓を学べましたので、紹介します。

1.3つの教訓
(1) 船室で転ばないように床を確認しておく
船室にはシャワーとトイレと洗面台が一体になったユニットバス型の部屋がありました。その出入口は段差があり、転ばないように気を付けていましたが、船室への入り口のドア付近の床にドアストッパーがあることを確認していなかったため、つまずきケガをしてしまいました。部屋に最初に入った際に床面を調べておくべきだと痛感しています。
(2) 日常に飲んでいる薬の英語名をメモしておく
医療を受ける場合、患者は状況を説明しなければなりません。添乗員がいる場合、ケガの概要は通訳してくれるでしょうが、日常的に飲んでいる薬の名前までは通訳してはもらえないでしょう。私の場合、毎朝服用している高血圧用の薬の英語名をスマホにメモ書きしていたので、なんとかなりました。
(3) 海外旅行保険に加入しておく
海外の医療費は高額ということは分かっていたので、出発前に海外旅行保険に加入していました。保険料は安くはありませんでしたが、いざ自分がケガや病気になったとき、躊躇なくメディカルセンターに相談できるという安心感がありました。クレジットカードに付帯している海外旅行保険でもある程度カバーできるようですが、適用範囲が限られ、支払われる金額も最低限のようです。

2. 医療スタッフの対応
今回のケガと医療スタッフの対応について以下に紹介します。
2.1 ケガの状況
航海5日目の夜間に私は船室の洗面台を使いそこから出たところ、ドアストッパーにつまずいて倒れ、足の中指付近を痛めてしまいました。その夜は痛みがあまりなかったのですが、次の日の朝になって指は紫色に腫れあがり、痛みもひどくなったので、添乗員にお願いして医務室(メディカルセンター)に連絡してもらい、痛みを堪えながら4階の医務室に添乗員に付き添われて行きました。

2.2 メディカルセンターでの治療
(1) 受付
すぐ医師に診てもらいたかったのですが、若い黒人の受付嬢は事前のチェックとして、まず体温を測るようにと体温計を渡してくれました。測ったところ平熱でした。高熱の場合はコロナの可能性があるため別室に案内されるようです。
次に2つの書類に必要事項を書くように指示されました。一つ目の書類は症状の申告書で、氏名、国籍、生年月日、性別、毎日飲んでいる薬、ケガの内容(時期、ケガの箇所、痛みの程度、など)を全て英語で記入しなければなりません。毎日飲んでいる薬を聞かれるとは思っていなかったので少し慌てましたが、出発前に調べてメモを作ってそれをスマホに保存していたことを思い出し、それを探し出しました。血圧の薬はテルミサルタンで、英語の訳、Blood pressure medication, Telmisartan tabletsを書いたところ、了解してくれました。ケガの箇所をfingers of left footと書き足を見せて説明したところ、injury to left 3rd toeに直されました。なるほど、足の指はfinger ではなくtoeというのだと痛みを堪えながらも思いました。
二つ目の書類は診療承諾書で、治療代を下船前に支払うこと、下船した後に後遺症など問題が出ても船会社に文句を言わないこと、その他、様々な制約条件と思われる英文が長々と3ページもありました。全部読んで理解するには何時間もかかってしまいそうで、一番下のサイン欄にすぐサインしました。
受付の処理に20分もかかってしまいました。
(2) 看護師
さらに10分程待たされ、手術室で着るような青い作業衣を着た恰幅のいい40代と思しき白人男性が来て、症状の申告書を見ながら、私の血圧を測り、ケガを1~2分診てくれました。この人がドクターだと思っていましたが、何も言わずにいなくなり、すぐに医師といっしょに戻ってきました。医師が診た後、実際の処置はこの看護師がやってくれました。左足の指全てをアルコール消毒し、打撲して紫色になった中指に軟膏を塗り、人差し指と中指の二本をガーゼで覆い、その周りを紙テープで巻いて固定してくれました。人差し指を添え木にした形です。このような処置は私としては初めての経験で面白いやり方だと思いました。この後、毎日、ガーゼを取り換えるための「ガーゼセットと紙テープと塗薬」を手渡してくれました。
食事の際にこの話を医療関係の仕事をしていた日本人の乗客に話したところ、日本でも同じ処置の仕方をするとのことで、国際標準の治療をしてもらったと感心しました。
(3) 船医
ドクターは50代くらいの白人女性でした。足のケガを診察し、足の指を動かしたときの痛さや動きから「骨折はしていない、X線撮影は不要、3rd toeの打撲なので腫れは二三日で治まるでしょう」と言ってくれました。また「X線撮影すると一枚400ドルするけど、念のため撮りますか」と聞かれたので、不要と答えたところ、「後は看護師がやります」と言い残して診察室から出て行ってしまいました。他に忙しいことがあるのでしょうか、5分も経っていなかったのではと思います。

2.3 セキュリティオフィサーによる現場チェック
自分の船室に戻って5分も経たないうちにセキュリティオフィサーという40代程の大きな体のインド人男性が来ました。ケガした場所を確認し、どのように転んだのかを検証したいとのことなので協力しました。ドアストッパーと履いていたサンダルの写真を撮った後、どのようにつまずき倒れたのか、誰かに突き飛ばされたのではないか、など事務的に調査し帰っていきました。添乗員によると目的は2つで、一つは事故の原因が設備に関するものであれば、改善するため。二つ目は患者が故意にケガをしたのではないかをチェックするためです。故意が疑われる場合は保険申請に必要な書類を出さない場合があるとのこと。

3. まとめ
医療スタッフの方々のお陰でケガの治療ができ、その後のクルーズ旅行は快適に過ごせました。上記のように彼らはビジネスライクでほとんど無駄話をしないいかにもプロという感じの人たちでした。とにかく、安心して治療を任せられると感じました。

  1. 参考
    ・ブログ「ニュージーランド・クルーズ体験記(2)」

By Eddy

Eddy Murayama

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